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ITサービスマネージャー

       

制作・運営:Zenken株式会社/提供:株式会社プライム・ブレインズ

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ITエンジニアの中でもITサービスの安定運用と継続的改善を担う「ITサービスマネージャー」領域について詳しく解説します。仕事内容ややりがい、求められるスキル、関連資格、そしてキャリアの広がりまでを網羅的に紹介します。

ITサービスマネージャーとは

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ITサービスマネージャーは、ITサービスの安定的な提供と、継続的な改善を両立させることを使命とする役割です。システムが「止まらない」「使いやすい」状態を維持し続けるために、日々の運用管理や障害対応、改善提案などを通じて、サービスの信頼性と品質を支えます。この役割は、特別な領域として分離されるものではなく、ITエンジニアリングのプロセス全体を支える基盤的なポジションであり、長く安全に使い続けられる仕組みを構築・維持する存在として捉えるのが適切です。

この領域で求められるのは、決して派手な技術スキルではありません。それ以上に重要なのは、現場の状況を的確に把握し、課題を整理しながら、開発・運用・ビジネスサイドを横断して周囲を動かしていく調整力と信頼関係です。日々の業務は外から見えづらい部分も多くありますが、組織にとって欠かせない「縁の下の力持ち」としての役割を担うため、現場経験の積み重ねや丁寧なコミュニケーションが、そのまま専門性と評価に直結していきます。華やかではないけれど、現場に最も近い安心の担保者です。

ITサービスマネージャーの主な業務内容

ITサービスマネージャーは、提供するITサービスの品質を維持・向上させるための運用設計と継続的な管理プロセス全体を担う重要な役割です。具体的には、SLA(サービスレベルアグリーメント)の策定・モニタリング、インシデント対応、変更管理、問題管理など、安定稼働を支える複数の運用領域に責任を持ちます。

日々発生するシステム障害への迅速な初動対応や、ユーザーからの問い合わせ対応など、サービスが常に使える状態であることを前提に、現場の最前線で安定した運用を支えていくことが求められます。

サービスに関する稼働データや問い合わせ傾向の分析、KPIの継続的なモニタリングを通じて、予防的な改善施策の立案・実行にも関与します。単なる保守対応にとどまらず、業務プロセスや運用体制そのものを見直し、より効率的で持続可能な運用モデルを構築していくのも大切なミッションです。ユーザー部門との要件調整や、外部ベンダーとの技術連携・契約調整といったマルチステークホルダーとの折衝も多く、円滑なコミュニケーション力が欠かせません。

ITILなどの運用フレームワークを基盤としながら、組織に最適な業務プロセスを定義・最適化し、全体のITサービス運用を統合的にマネージメントしていく。それが、ITサービスマネージャーという領域の本質的な役割です。

サービス戦略の設計・立案

ビジネス目標や顧客要求に基づき、提供すべきITサービスの内容・品質・SLAを明確化。コストや体制設計も含め、サービス全体を見渡した戦略を立案します。

システム導入・構築支援

新規機能やシステム刷新に関しては、インフラ設計・環境構築・監視設定などに携わり、運用面からの最適な設計支援を行います。

運用・保守・監視業務

運用設計に基づき、システム稼働状況をモニタリング。トラブル対応、定期メンテナンス、障害報告、セキュリティパッチ管理などを主導し、安定提供を支えます。

継続的な改善とレポート

運用実績やログデータを分析し、改善提案・運用最適化・自動化推進・コスト削減を実現。顧客向けレポートも作成し、信頼構築に貢献します。

ITサービスマネージャーの最大のやりがいは、「何も起きないことを日常として維持する」ことにあります。システムが止まらず、ユーザーがストレスなく業務を進められる状態を裏側で支え続ける──その地道な積み重ねが、組織全体の信頼性やパフォーマンスに直結しています。一見すると目立たない領域ではありますが、たとえば障害発生時に即座に対応し、影響を最小限に抑えた上で速やかに通常運用へ復旧させたときや、地道に提案してきた運用改善施策が採用され、チーム全体の業務効率が上がったときなどには、大きな達成感とやりがいを得ることができます。

また、ユーザー部門から「いつも安定していて助かっている」「対応が早くて安心できる」といった感謝の言葉をかけられる瞬間は、この仕事のモチベーションを大きく高めてくれます。直接的に売上を生み出す部門ではないものの、ITサービスが止まればすべての業務が止まる──そうした認識の中で、自らが企業活動の土台を支えているという実感を日々味わうことができます。

運用という性質上、「変えないこと」が評価される場面も多い一方で、効率化や予防策の提案など「変える力」も求められます。その中でバランス感覚を持って判断を下し、現場に信頼されながら責任を果たす──そんな仕事の積み重ねが、確かな成長と信頼につながるのです。

ITサービスマネージャーで得られるスキル・経験

  • リーダーシップ:障害対応・緊急時対応での意思決定、関係者の調整力
  • サービス設計力:監視体制構築、インシデントフロー、SLA設計など
  • 問題解決力:過去の障害傾向・KPI分析をもとに課題の構造化と改善提案
  • 対人スキル:顧客報告・社内外調整・チーム内メンタリング
  • セキュリティ対応力:脆弱性対応・ポリシー策定・運用監査への対応力

ITサービスマネージャーとしての業務を通じて、安定したITサービスの提供に必要な知識とスキルを総合的に身につけることができます。たとえば、ITILやISO/IEC 20000といった国際的な運用管理フレームワークに基づいたプロセス設計や、インシデント対応・変更管理・構成管理といった各種運用フェーズにおけるベストプラクティスの理解と実践、さらに障害発生時の根本原因分析(RCA)や、恒久的な再発防止策の策定など、実践的な対応力を磨くことが可能です。

運用の質を定量的に評価するためのKPI設計やログ分析、ユーザー視点を踏まえたSLA(サービスレベル合意)の策定と調整など、改善と信頼構築を両立させる視点も自然と養われていきます。

複数の外部ベンダーとの調整業務、チーム内での役割分担の最適化、社内の関連部門との定例的な情報共有など、マルチステークホルダーとの連携を通じて、高度なファシリテーション力や実務的な交渉・調整スキルも身についていきます。

こうした幅広い経験を重ねることで、運用の「守り」だけでなく、「攻め」の改善提案も行えるようになり、技術者としての信頼性や対応の柔軟性が格段に高まっていきます。安定と変革を両立する視点こそが、この領域の醍醐味です。

ITサービスマネージャーに関連する資格

ITサービスマネージャー試験(IPA)

国家資格であり、サービスマネージメント全般(計画・設計・提供・改善)の理解と実践力が問われます。高度試験の一つとして、ITIL準拠の設問構成が特長です。

ITIL Foundation

ITサービスマネージャーの国際標準フレームワーク。外資系企業やIT部門との共通言語として活用され、国際案件にも強くなれます。

情報処理安全確保支援士(IPA)

セキュリティ視点を強化したい人に適した国家資格。可用性・完全性・機密性に関する知識と、事故対応・ポリシー策定力を評価されます。

ITサービスマネージャーのキャリアと将来像

ITサービスマネージャーとして現場での経験を重ねていくことで、将来的には、ITサービス全体の運用を統括するシニアマネージャーや、企業の基盤運用を支える設計・戦略策定を担う運用設計スペシャリストといったポジションで活躍することが可能になります。現場で培った実務力と調整力を武器に、組織全体の安定運用と効率化をリードする立場へと進化していけます。

特に、インシデント管理や稼働率改善の経験を活かしながら、運用フェーズの継続的改善活動や業務自動化における施策を牽引する役割が期待されます。また、DevOpsやSRE(Site Reliability Engineering)といった領域との連携も深まり、運用と開発を横断して品質を高める戦略的な関与も可能になります。

さらに、企業全体のIT基盤を支える存在として、運用領域を越えて情報システム部門の戦略企画やBCP(事業継続計画)、セキュリティ・ガバナンス整備などに携わるチャンスも広がっていきます。運用視点を持ちながら経営層の意思決定を現場に橋渡しできる人材として、企業のIT戦略を実現可能な運用設計として形にしていく中核的存在となるキャリアです。積み重ねた専門性と実務経験を活かし、組織に「安心」と「継続」を提供できる信頼される技術者としての未来が開けていきます。

運用を極め、信頼を築く。ITサービスの要を担う仕事

ITサービスマネージャーは、単なる「保守役」ではありません。サービスを止めないための設計力、関係者と調整しきる推進力、継続的に価値を生む改善力。すべてを兼ね備えることで、現場と顧客の両方から「信頼される人材」として評価されていきます。この領域での経験は、キャリアの確かな土台となるでしょう。

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